2012年09月28日
第5回 宿場町 由比・蒲原

国道1号線を東京方面へと向かっていて、駿河湾越しにそびえる富士山が目に飛び込んでくると、その美しさと迫力に、毎回、ハっと息をのんでしまいます。急な坂を登ったところにある「さった峠」から見下ろす景色は、浮世絵師・歌川広重が「東海道五十三次」で描いたまま。もちろん高速道路や自動車、線路はありませんが、人工的なものでも、この道路のカーブは美しいですよね。江戸時代は旅人たちがこの道をエッサエッサと歩いていたのかと思うと、感慨深い気持ちになります。そして富士山ほど、見る場所によって雰囲気が変わるものはない!海&富士山、湖&富士山、茶畑&富士山、桜&富士山、ススキ&富士山、夕陽&富士山、朝日&富士山……そして、ガンダム&富士山!(これはみなさん撮影するのにいろいろ苦労したようです)。
100年前も100年後も、富士山は日本人にとって特別な存在なのだと、由比から見る富士山にはそう思わせる何かがあります。由比も、お隣りの蒲原も、古い街並みがそこかしこに残っており、風情ある景色に富士山の姿はとても良く映えます。変わらない富士山と変わらない街並み。そこに暮らす人々がいて、受け継がれていく歴史にちょっと感動してしまいます。

江戸時代に大名が宿泊した本陣の跡地である「由比本陣公園」の中に、「東海道広重美術館」があります。広重が東海道五十三次で描いた「蒲原」は、一面の雪景色。温暖な気候でめったに雪が降らないこの地になぜ雪?と、研究家たちはその謎を追究しているようですが、広重としては、「この素朴な街並みに雪が積もったらキレイじゃん!雪、描いちゃおう」という軽いノリだったのかもしれませんね。そのイマジネーションが傑作を生んでいるのです。現実に雪が降ろうが降るまいが、「情緒があって美しい」それでよいと思います。
その蒲原に、国の有形登録文化財にも指定された「旧五十嵐歯科医院」という建物が残っています。大正初期に町屋を洋風に改築した建物で、当時は珍しかったモダンな外観が目をひきます。中に入って見学することができ、洋風の治療室と純和風の待合室が隣り合っていているところがまた斬新。
最後に忘れてはならないのが由比の桜えび。漁期は春(4~6月)と秋(10~12月)の2回で、由比港にある漁協直営店であつあつサクサクの桜えびのかき揚げが食べられます。身はちっちゃいのにあの旨み!日本では駿河湾でしか獲れないのですから、これは食べなきゃ帰れませんよ。

浮世絵師・歌川広重が描いた場所「さった峠」
(しずおかオンライン編集部 鈴木愛)
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第1回 久能山東照宮
第2回 富士山のおひざもと、朝霧高原
第3回 三島・清水町 水辺散策
第4回 動物たちとのふれあい
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Posted by eしずおかコラム at 12:00